アポイ岳


特殊な植物

アポイ岳とその周辺は、針広混交林で冷温帯性のキタゴヨウと亜高山性のアカエゾマツの混生が見られるほか、高山植物やエゾナキウサギなどの分布が低い標高まで降下する一方、コゴメウツギやコナラなど数多くの温帯性植物の東限となるなど、北方系と温帯系の動植物が同居するという奇妙な生態系をつくっており、生物多様性のホットスポットともなっています。特に、アポイ岳は、810mという低標高にもかかわらず約80種の高山植物が生育し、しかも亜種・変種・品種を含む固有種は20種近くに及び、これほど固有種が集中する地域は世界的に見てもきわめてまれといわれています。

これほど特異な生態系がある背景には、地球深部の贈りもの・かんらん岩が大きく影響しているなど、以下の3つの要因があると考えられています。


アポイ岳をつくるかんらん岩からつくられた土壌には、植物の生育を阻害する成分(ニッケルやマグネシウムなど)が多く含まれています。また、かんらん岩は削られにくく土壌の堆積に時間がかかるうえ、できた土壌も風雨で移動しやすいため、薄く、乾燥しやすく、栄養にも乏しいのです。このため、極相であるはずの針葉樹林の成立を阻んでいるのです。


積雪量が少ないうえに強風にさらされるアポイ岳では、土壌の凍結融解が起きやすく、植物の根が傷つけられたり、斜面地の土壌が不安定になるなどの環境にさらされます。また、アポイ岳は海に近く、主に夏場に海霧におおわれるため、気温が低下します。こうした気象条件が、アポイ岳の環境を高山に似たものにしているのです。


アポイ岳は誕生以来、一度も海面下になることがなく陸地であったため、誕生当時の植物群を保護してきました。さらに、氷期に陸続きとなった大陸から南下してきた北方系の植物は、温暖な間氷期に高山やアポイ岳などに逃げ込みました。こうしてアポイ岳に残ったり隔離した植物が、かんらん岩の特殊な土壌に適応していく過程で独自の進化を遂げ、ここにしかない固有の植物となったのです。

奇妙な天候

標高アポイ岳の気候は、基本的には他の山と同じだが、特殊な植物が地下水を汲み上げ蒸散することにより、湿度が常時かなり高く維持されている。また、植物が回りの環境に合わせて蒸散の量を変化させるため、天気によって約8時間後の湿度もわかる。晴れならば湿度は下がり、曇りならほぼ横ばい、雨ならば湿度は上がる。これを登山に活かしたい。

登山時の注意

行動食や非常食には、この山の高い湿度に耐えられるものを持っていくべきである。